2014理事長所信

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はじめに

 1957年(昭和32年)、東京オリンピックが誘致決定する2年前に花巻青年会議所は全国で128番目の団体として花巻に産声をあげました。終戦からわずか12年足らず、質素清貧の日々を送り、生きることに懸命になっていたであろう当時の先輩方は、その厳しい環境の中にあってなお、自らのまちをより良くしようという志を抱いたことに我々は畏敬の念を覚えずにいられません。

「我々青年が次代の岩手を担うための指導者訓練を基調にした個人的集団的修練、さらに地域社会への奉仕を通じて住みよい郷土作りに貢献しようというスローガンを掲げ、我々の岩手が大飛躍する原動力たらんとする若人の激しい使命感をもって活動していこう」

 祖国復興という大きな夢を掲げ、経済人としての強い危機感と使命感、青年としての抑え難い情熱が50数年を経た今でも我々の心に響いてきます。花巻青年会議所が創設されてから57年が経過し、先人たちの血と汗の結晶を享受し、我々は何不自由ない豊かな生活を送らせて頂けるようになりました。戦後復興を成し遂げた先人たちの高潔なる想いが自国の未来を切り拓き、このまちの未来を自らの手で創造してきたのです。我々はこの想いを範とし、次代へよりよい社会を引き継いで行くために自ら考え行動して行かなければなりません。これからこの地域を創造して行く責任世代である我々に求められるものは、時代を切り拓いてゆく人財の育成だと考えます。東日本大震災は多くの犠牲と引き換えに人と人の繋がりの大切さを改めて教えてくれました。我々は市民が共に手を携え、共に歩んで行ける明るい豊かな社会を実現するために、まず自ら志を高く持ち、心を育み、確かな価値観と道徳心、挑戦し続ける気概を持った人財となる必要があります。そして社会のために自ら考え率先して行動するなかで、その心を伝播し、市民と共鳴することによってこの地域に我々の運動を広めて行きたい。人の心に寄り添い、心を共鳴することで絆を育み、その連鎖がこの地域を繋いだとき、市民の心は相手を思いやり助け合う結の精神でひとつとなり、市民は志民※1へと昇華し「誇りあるまち花巻の創造」が実現するのです。

経験は私たちに成長をもたらしてくれます。志を同じくする仲間と、そして地域の方々と心を通わす心の共鳴という経験が絆と結の精神を育み、市民が志民へと成長する自立への道であると信じ、我々は矜持を持って自らの運動を推し進めて行きます。

いつまでも、そしてどこまでも鳴り響く心の共鳴から「誇りあるまち花巻の創造」そして「明るい豊かな社会」実現へ向けて歩みだそう。

 

心の共鳴による人財の育成について

 人間らしい感情の一つである感動は多くの場合心情に正の変化をもたらします。正の変化とは将来に対しての夢や希望、使命感、大きな喜び、目標の発見など様々であるが、人の精神的支柱となりえることに間違いはないはずです。感動は価値観の変化をもたらし、豊かな感受性の素晴らしさを気づかせてくれるのです。我々は人と人との繋がりの重要性が改めて見直されている今の社会だからこそ感動の創造と共有を通して豊かな感受性と確かな価値観、強く生きる気概を持った人財を育くんで行きます。また感動の創造と共有は、その過程に於いて人との繋がりの大切さも気づかせてくれるはずです。何かを成すという事は相手と心を通わせる必要があります。心を正対し、互いに歩み寄ることで、相手を受け入れ理解し、やがて互いの心はひとつとなり「絆」となっていくのです。我々は感動の創造と共有を「心を伝える」と「心を育む」という2つの方向からアプローチをおこなって行きます。

人は一人で生きて行けるわけではありません。それぞれに愛する大切な人がいるはずです。日常生活の中でそれぞれが大切にしている人に対して、想いを伝えることはなかなか出来ないものです。だがその想いを相手に伝えた時、喜びと共に強く生きる気概と愛する人を守る使命感が湧き上がり、自らとその環境をも変えて行こうという想いを新たにするはずです。愛する大切な人との心の繋がりをより強めることで、自分を見つめ、未来に対し目標を持って強く生きる気概を持った人財の育成を図ります。

実社会においてミッションの達成は様々な場面で求められます。特にも個人では成し得ない大きなミッションの達成は価値観の変化と大きな自信をもたらします。しかし、多くの人が関われば関わるほど意思統一は難しくなっていきます。その中でミッションの達成には個々を認め合い、助け合う、他を慮る心を持つことが重要になってきます。共感により心の交流を図りコミュニケーション能力を向上させ、達成により得た自信を次なる挑戦に繋げていくことで、社会のために自ら何が出来るのかを考え行動する自立した志民を育んで行きます。

 

未来を創造する青少年の育成について

 幼少時代の環境、教育は人間の人格形成に大きな影響を与えます。特にも小児期は家族という小さい社会から一般社会へ出立し、適応して行かなければならない時期であり、また自我が芽生える時期でもあります。社会生活を送る中で必要とされる価値観や道徳心はこの期間を如何に過ごすかに係ってくるのです。花巻青年会議所は2006年度から遠野、釜石、花巻青年会議所合同事業として青少年キャンプを開催しています。この事業を通して自らの行動に責任を持ち、相手を慮るコミュニケーション能力を育み、自発的に物事に挑戦して行くことで、自尊心が芽生え、自らの特性を見出して行くはずです。この特性こそ本当の意味での個性であり、個性を尊重し合い、互いの力を社会のために役立てて行くことで自らの手で未来を創造して行く自立した人財を育成して行きます。

また、2009年に設立された「はなまきユナイテッドチルドレン」(はなまきUC)は代替わりを繰り返しながらも、それぞれの年で自らの考えで運動を展開してきました。花巻青年会議所ははなまきUCを後見する立場として、はなまきUCが自ら考え行動して行ける自立した組織へと進化する事を期待し、情報提供や事業構築のサポートと必要に応じた事業の連携をおこなって行きます。

 

花巻の文化の継承について

 慶長時代、当時の藩主であった南部利直が花巻城に立ち寄った際に振る舞われたそばを起源とするわんこそばは、花巻の食文化であるそばと、おもてなしの心が融合した花巻が他に誇る文化ではないでしょうか。その花巻の文化を全国に発信する「わんこそば全日本大会」は本年で56回目を数え、全国各地から参加者が集う大会となっています。昨年度からこの大会の事務局を花巻青年会議所が担うこととなりました。我々は花巻を代表するそば文化を全国に発信する使命を与えられたことに誇りを持ち、企画運営の中心となる団体として市民の先頭に立ち、より多くの市民と共にこの文化の共有を進めて行きます。その為にも関係団体や市民ボランティアの方々との連携をより密にし、参加者と来場者がともに楽しめるおもてなしの心溢れる大会運営を目指して行きます。

郷土の偉人宮澤賢治は詩人、童話作家として多くの作品を遺しました。人と自然を愛し、世界全体の平和を望んだその思想は市民に慣れ親しまれ、理解されたからこそ市内各所にその想いと共に遺されているのです。花巻の夏の夜空を彩る「イーハトーブフォーラム花火大会」は自然豊かな花巻で地域の方々全体が共に楽しめる催事として市民に定着しています。花火大会の運営を任された我々花巻青年会議所はイーハトーブフォーラム実行委員会の一員として、5年間の大会運営で培われてきた経験を生かし、来場者全体の安全性を最優先と捉えて設営の改善を進めると共に、花火大会を通じて宮澤賢治の精神を感じられる、安心して楽しめる大会運営を目指して行きます。

これらの事業を通して市民と共にまちの文化に触れ、楽しんでもらう中で、まちを愛する心を育くみ、まちの未来を共に創り、共に受け継いで行く意識の醸成へ繋げて行きます。

 

3年目を迎える被災地支援について

 東日本大震災から約3年が過ぎ、沿岸の各地域の復興も徐々に進んできています。多くのボランティアが被災地を訪れ、その活動の成果としてまちが復興へと着実に歩みを進めているのです。発災当初に必要とされた人的支援・物的支援は被災地の方々の生活を復旧するために役立てられました。発災当初必要とされた人的支援・物的支援から時間の経過と共に求められる支援の性質は復旧活動からまちを地域おこしやコミュニティー、文化の復興へ変化しています。我々は釜石青年会議所を支援する青年会議所として、また同じ志を持ち運動を展開している沿岸地区の各青年会議所のまちの復興の為、広域的な復興活動を行います。昨年、公益社団法人日本青年会議所東北地区岩手ブロック協議会が主催した被災地支援を目的とした学習支援事業は沿岸被災地の児童と県内外の大学生、青年会議所会員の三世代の交流を通して其々の世代に大きな学びをもたらしました。その学びとは単なる学習だけではなく将来に対しての希望や憧れであったり、使命感であったり立場によって様々であったが、未来に向けて歩みだす原動力になったことは間違いありません。我々は被災地の未来を担う児童に多くの学びの機会を提供し、同世代間の横の繋がりと児童、大学生、青年会議所会員の縦の繋がりを生かし、参加した児童が夢と希望を持って歩み出すことで被災地の復興を後押しして行きます。また、2012年に掲げた東日本大震災復興活動指針に基づき釜石青年会議所をはじめとした沿岸の各地青年会議所と連絡をとり、必要に即した臨機応変な被災地支援をおこなって行きます。

 

花巻市長選挙立候補予定者公開討論会について

 花巻市民一人ひとりがこの地域の進む道を選択する機会である花巻市長選挙。花巻市の未来を任せる為政者を選出する重要な選挙であり、私たちの暮らしに最も近い選挙でもあります。このまちに暮らす市民ひとりひとりがまちの未来を真剣に想い、主権者としてよりよいまちへと導くために主体的に地域づくりに関わっていく社会を創造して行かなければなりません。そのために我々は公正中立、不偏不党の立場で、政策本位の政治選択を行える環境の拡充を目的としてクロストークによるマニフェスト型公開討論会を開催することにより単に各立候補予定者の考えを比較するだけでなく、立候補予定者がお互いに考えの相違を討論し、市民の方々が立候補予定者の政策や考えをより深く知る機会を創出して行きます。これによって有権者により有益な情報がもたらされ、自分自身の考えを最も反映している立候補予定者を見つけ出すことが出来るのです。また事前周知にも注力し、公開討論会の開催により市政への関心を高め、多くの市民に来場いただくことで主体的に地域づくりに関わる意識の醸成に繋げて行きます。

 

会員拡大・会員開発について

 近年の会員拡大の成功により花巻青年会議所は会員数を年々増加させてきました。会員数の増加は我々の事業を実行する際に必要となる組織力の強化、そして運動の発信力の強化に繋がります。会員の拡大による組織力の強化によって幅広い事業を構築することが可能となり、また多くの会員が英知を出し合うことによってより効果的な事業を構築し、市民へと発信できるのです。我々はこの組織力と発信力をより強化するため、本年度の拡大目標を30%とし、100人体制の組織を目指して行きます。志を高くもち、我々の運動に賛同いただける新たな会員をひとりでも多く増やし、個の力を組織の力へと生かすことで組織の活性化を図って行きます。また、新入会員セミナーの内容を検討し、青年会議所運動に関わる基本的知識や目的認識の統一を図ることで会員間の考えの齟齬(そご)を減らし、目的に向かって一体となって進んで行ける組織として行きます。

会員開発に於ける会員の指導力向上及び社会に対する意識向上は、青年会議所における事業の構築や社業の発展に直結する重要な要素です。社会のオピニオンリーダー※2を目指す我々は、先ず自らの芯となる確かな価値観と道徳心を持ち、公共の担い手として自己研鑽にはげむことにより所属団体や地域を牽引する人財となる必要があります。そしてそれらによりよい変化をもたらそうという使命感と行動力を持った人財は青年会議所内で互いを磨きあうなかで志を同じくし、心を共鳴することによって、より洗練された人財となり影響力を波及するのです。所属団体や地域を牽引する人財となるため、その土台となる確かな価値観と道徳心を育くんで行きます。

限られた時間と環境の中でよりよい社会へ変革して行く原動力となる人財の育成を図り、所属団体と地域を活性化させることにより明るい豊かな社会実現へと寄与して行きます。

 

公益社団法人格維持について

 花巻青年会議所が公益社団法人格を取得してから約2年が経過しました。公益社団法人格の取得は税制の優遇、行政や対外組織に対して高い社会的信用など大きなメリットがあります。反面、公益社団法人格維持には行政庁からの監督指導、公益認定法の遵守など高いハードルが設けられています。我々はこの2年間、組織をより円滑に運営するために担当会議体を設けて会計処理の仕組みやコンプライアンスの意識を進化させてきました。これによって事業計画書・報告書の精度も向上し、組織として円滑に機能することが出来ているのです。この仕組みを継承し、組織により浸透させていくことで安定した運営を目指して行きます。また、一般会員に対しては公益社団法人の基本的な知識を習得するセミナーを開催し、公益社団法人の会員が最低限知らなければならない知識を習得し、組織としての基礎を作って行きます。さらに理事者に対しては理事の責任や運営に関する一歩踏み込んだ内容のセミナーを開催することで、理事者としての意識の向上を図ります。また公益社団法人の運営にあたって必要とされる手続きのマニュアル化をより進めることで円滑に運営できるよう整備して行きます。

 

総務・広報について

 組織運営において必ず必要となってくる総務室は、近年組織が拡大している花巻青年会議所にとってより重要なセクションとなっています。総会の設営、例会の設営、賀詞交歓会、卒業式などの職務は変化しないものの、会員数の増加に伴い総務室の采配によってその成果は大きく左右されます。従来の決められた職務を確実に遂行する中で組織内の連絡調整能力がより求められてきます。また公益社団法人は法律により基本10項目の資料公開義務が課せられており、我々はホームページを用いて対外に適切な情報を公開してゆかなければなりません。またホームページは不特定多数の受益の機会を提供するツールとして重要な役割を担い、フェイスブックに代表されるようなSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)も併用することで新鮮な情報を広く公開して行きます。対外広報誌「不畏雨」はホームページを利用しない方々にも我々の運動を発信できる機会であるということを認識し、限られた発刊回数を最大限有効に活用することで、我々の心を市民へ伝播していきます。組織の基本的かつ重要な担いを司る総務室が組織を下支えし、機能的・効率的に職務を遂行することによって組織としての進化へ繋げて行きます。

 

おわりに

 私が幼いころ、両親はとても忙しく、母親代わりに社員の方々におんぶをしてもらい、愛する我が子のように育てていただきました。背中から伝わってくる温もりは社員の方とはいえ、温かく安心して眠ることの出来るものでした。事務所の片隅の6畳一間に家族5人食卓を囲み、薄っぺらな布団に川の字になって寝起きをする生活でしたが、社員や地域の方々と共に生き、人と人との距離が、心と心の距離が今以上に近く、喜びも悲しみも分かち合って暮らしていたと感じます。両親と社員の方々に育てられ、地域の方々に見守られ、私は育ちました。そして現在に至るまで多くの方々にお世話になり、育てられ、導かれたから今があるのです。花巻青年会議所に入会し、私は社会奉仕の素晴らしさに気づかされ、そして今、その機会を与えられているのです。私だけではない、全ての会員がそれぞれの人生の中で多くの方々にお世話になり、育てられ、導かれてきたはずです。私たちはその恩を自らの運動を通して社会に還元して行く義務があると想うのです。

 先ず隗より始めよ
「大事を成すにはまず、身近なところから始めよ。また自分から率先して始めよ」を意味するこの言葉に私たちの運動の原点である心の持ち方があるのではないでしょうか。自らが率先して意識変革を行い、物事を見極める確かな価値観と道徳心、前向きに挑戦する気概を持った人間力の高い人財となることで、自ら考え行動して行く自立した志民に近づくことが出来るのです。そして、意識を変革した会員同士が相手を思いやり、互いに理解しあうことで心を共鳴し、志をひとつに運動を繰り広げることによって、社会に対してより大きな発信力と影響力の高い組織へと進化して行くのです。個々の会員が、花巻青年会議所という組織が、市民の心に寄り添い、一人ひとりと心を共鳴し、共に手を携え、共に歩んで行ける志民を得て行くことが「誇りあるまち花巻の創造」の道を拓き、「明るい豊かな社会」へと繋がると信じ、我々は1年間精一杯運動を展開して行きます。

私たちの受けてきた恩恵を、次代へよりよい社会を創造することで報いて行こう。

愛する人のため、愛する家族のため、愛する地域のため、心の共鳴をこの地域に広げて行こう。

第58代 理事長 佐藤 淑憲

※1 志民・・・社会のために自ら何が出来るか考え、行動出来る市民

※2 オピニオンリーダー・・・地域社会や集団の意見や行動、判断に影響力を持つ人