理事長所信2022

理事長所信2022


心を一つに
~敬意と感謝から共感が生まれるまち花巻の創造~


はじめに

新型コロナウイルス感染症の世界的な流行は、人と人とのコミュニケーションに大きな変化を及ぼしました。感染拡大の防止とコミュニケーションの両立を図るために、インターネットを利用した間接的な交流の機会が増加し、人と人との交流における行動様式は今後も変化し続けます。このような変化の中にあって求められるのは、コミュニケーションの本質である相手を慮る心であります。敬意を持って接すれば、相手は必ず耳を傾けてくれます。感謝の気持ちを伝えれば、相手との絆が深まります。互いを認め合い、違いを尊重することで共感が生まれ、その関係はより強固なものとなります。そして、置かれた立場や考え方が違う者同士が共感で結ばれた時、個々の持てる力を遥かに超えた大きな力となるのです。異なる価値観に対する柔軟性を持ち、互いの違いに寛容であれば、共に未来を切り拓く新たな価値を創造する可能性を見出すことができます。先行きが不透明で将来の予測が困難な時代にあって、自らの基準だけに頼って判断して異なる考え方を排除すれば、社会の分断と対立を招くことになります。相手を慮る心を持つことによって、個々の価値観を尊重することが可能となり、価値観が違う者同士の協調が生まれ、社会に分断と対立を生じることなく多様な価値観による共生が実現します。

価値観の多様化は人と人との関係に留まらず、地域とそれを取り巻く社会情勢との関係においてもこれまでにない新たな課題を提起しています。気候変動対策という世界規模の潮流が地域における脱炭素を推進する政策に反映される等、環境や社会を経済に対して優先させる世界的な価値観の転換が地域の未来に直接的な影響を与える課題として現れています。また、人々の価値観が多様化したことで、大量生産・大量消費型社会の下で多くの商品をできるだけ安く供給することを重視する量的価値から、地域に根差した背景やストーリーに基づく、数字では表すことができない心の豊かさといった質的価値へとニーズが変化しており、地域の活性化における重要性が増しています。私たちは、価値観の多様化に伴う情勢の変化に順応し、地域により良い変化をもたらす好機と捉えて持続可能な地域社会を実現します。
同じ地域に生きる人々が、誰かに任せるのではなくそれぞれの個性を輝かせて共にまちを創るという一つの想いに共感した時、誰一人取り残さないまち花巻が創造されるのです。

 

創立65周年を迎えるにあたり

1957年、全国で128番目に創立された花巻青年会議所は、率先して道を切り拓き、時代とともに変わりゆく地域社会の未来を常に見据え、まちづくりやひとづくりを実践し続けた先輩方の積み重ねた弛まぬ努力によって成り立っています。また、創立以来永きに亘り地域において青年会議所の運動を継続できたのは、地域の発展のために想いを同じくする市民の皆様並びに関係諸団体からのご理解とご支援の賜物であります。創立65周年を迎えるにあたり、花巻青年会議所の歴史を連綿と紡いで来られた先輩方へ敬意を表すとともに、これまで多大なるご支援とご協力をいただいた多くの方々に感謝を伝え、共にまちを創る共感の輪を拡げます。花巻青年会議所は、20歳から40歳までの限られた時間の中で、常に卒業生を送り出し入会者を迎え入れることによって組織としての活力を生み出し、時代に応じた運動を展開してきました。私たちは、創始の当時から今日に至るまでの運動を振り返り、時代が移り変わる中でも変わらぬ青年会議所の意義を認識した上で、新たな時代を切り拓く決意を持って時流を読んだ先駆けとなる運動を発信しなければなりません。これからの地域と花巻青年会議所の未来を見据えた行動を起こすことが、地域に持続的なインパクトをもたらすのです。敬意と感謝を伝え、未来の花巻に希望を抱き、いまを懸命に生きる。地域のために為すべきことを為してきた先輩方の想いを受け継ぎ、いまの時代に求められる新たな価値を創り出し、まちの未来を想う地域の皆様との共感が生まれるまち花巻を創造します。

 

世界への眼を開く

社会の急速なグローバル化の進展の中で、国境を越えて人、物、情報が活発に行き交い、国際社会は一層緊密になっています。世界規模で物事を考え、地域から行動を起こすことは、SDGsに代表される国際的な取り組みを自らの行動の指針に落とし込むことにつながり、地域の課題解決に対して新たな可能性をもたらします。また、学校教育の場においても、小学校における外国語教育が必修化され、国際的な視点を持って異なる文化や習慣を持った人々と積極的に交流を図ることのできる資質を高め能力を育むことが求められています。国籍を超えた交流は、これまでに出会ったことのない文化や価値観への理解を促進するのみならず、自国や住み暮らす地域の文化や魅力を見つめ直す機会を生み出します。花巻市には、いわて花巻空港への国際線の就航により平成30年度には年間約5万人の外国人観光客が訪れ、現在400人を超える外国人が住み暮らしています。しかし、近年において国際交流に関心のある市民の割合は減少傾向にあり、外国人との交流や共生について多くの市民の意識が高まっているとは言えません。私たちは、異なる文化や価値観を持つ人々との出会いを楽しみながら、自然と多様な価値観を受け入れる柔軟性を育み、自らの地域の文化や魅力を再認識する機会を創出し、市民の国際交流への関心を高めていかなければなりません。国籍を超えた人と人との出会いから、異なる文化的背景を持つ者同士が互いを理解し合い、文化的多様性を活かして共に地域の発展に貢献することで、多文化がいきいきと共生するまち花巻を創造します。

 

環境と共生する持続可能な地域を創る

近年、気候変動が一因と考えられる異常気象が世界各地で発生し、日本においても激甚な豪雨、台風災害や猛暑が頻発しています。世界全体の平均気温の上昇を抑えるために、国際社会において二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出を2050年までに実質ゼロとするカーボンニュートラルを目標として掲げる動きが広がっており、日本政府も脱炭素社会の実現を目指すことを宣言しました。アフターコロナの経済復興において、欧米をはじめとする多くの国では持続可能な脱炭素による復興、いわゆるグリーンリカバリーが重視される傾向にあります。私たちの日常生活や企業活動において、自動車や公共交通機関を利用して移動したり物を運送する、照明を点ける、機械を稼働させる、冷暖房で室温を調節する等、多くの行動がエネルギーの消費を伴います。現状ではエネルギーの多くを石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料を燃やすことで生み出しており、化石燃料を燃やせば温室効果ガスを排出することになります。脱炭素は私たちの身近な行動と密接に関係した課題であり、国や大企業だけに限った目標ではなく、地域の市民や企業も環境問題の解決と持続的な地域経済を両立するために積極的に取り組んでいかなければなりません。岩手県内では県北9市町村が北岩手循環共生圏を結成して再生可能エネルギーのポテンシャルを活用したエネルギーの地産地消と脱炭素化に注力しています。花巻においても、地域の関係者が主体となって、再生可能エネルギーなどの地域資源を最大限活用することで、脱炭素化に伴う地域経済の活性化に貢献することが必要です。地域脱炭素に対する理解を深め、環境を良くすることで経済も良くする取り組みに当事者意識を持ち、身近な地域の課題から世界規模の目標への挑戦を始めましょう。地域の新たな可能性に好奇心を抱き、環境と共生するまちづくりを先導し、市民や地域の関係者と協力し行動することで、持続可能なまち花巻を創造します。

 

ふるさとを愛し豊かなまちを創る

好きなことであれば時間を忘れていつまでも没頭できます。好きな物だからこそたくさん集めたりもっと深く探求したくなります。まちづくりも自らの住み暮らす地域を純粋に好きになることから始まるのではないでしょうか。都市に対する市民の誇りを意味するシビックプライドという言葉があります。これは19世紀のイギリスで多くの商工業都市が発展した際、王侯貴族に代わって都市の主役となった市民が、新たな都市づくりを支えていくことを自らの使命としたことを起源とする言葉です。自分の住み暮らす地域に愛着を持ち文化や歴史を誇りに思う気持ちと、当事者として地域をより良くしていくという意識が、いつの時代においてもまちづくりの原動力となるのです。花巻市の近年における人口の動きを見ると、特に18歳から24歳の転出超過が多く、進学や就職を契機に都市部へ転出しているものの、30代から40代は県内外とも転入が増加傾向であり、子育て世帯の転入は増えています。継続的に若い世代を花巻に迎え入れるためには、地域にある自然や文化、産業を活用し、若い世代が地域で働き、得られた所得を地域で消費し、地域内で経済を循環させる持続可能な循環型社会を実現しなければなりません。そのためには、人々の心の豊かさや地域で大事にされる歴史や文化等の定量化できない質的価値を創り出す新たなまちの発展に向けた取り組みが必要となります。市民が愛着を持ち誇りに思う地域資源の背景やストーリーを共有することで、多くの市民が花巻の魅力を楽しむことからシビックプライドを醸成し、自らの住み暮らす花巻の魅力を地域の内外へ発信することが求められます。若い世代が地域への愛着と誇りを持ち、地域の未来に自らの人生を重ね合わせて希望を描き、自ら地域をより良くしていく当事者意識を高め、持続可能な活気溢れるまち花巻を創造します。

 

未来の創り手と共に成長する

先端技術が高度化してあらゆる産業や社会生活に取り入れられたSociety5.0※時代の到来、感染症の世界的流行といった突発的で危機的な事態の発生等、子供たちは、親世代の私たちでさえ答えを持たない問いに立ち向かわなければなりません。明確な答えのない問いに対処するためには、目の前の事象から解決すべき課題を見出だし、主体的に考え、多様な立場の人々と協働的に議論し、皆が納得できる解を生み出す資質や能力が求められます。デジタル時代にふさわしい質の高い教育の実現を掲げたGIGAスクール構想※に基づき、花巻市においても市内小中学校の児童生徒に1人1台端末が整備され、子供たちはこれまで以上に多くの情報に接する環境に置かれます。しかし、デジタル端末は使う者の思考を経ることなく簡単に答えを導き出してくれる道具ではなく、あくまで情報の収集や分析に有用なツールに過ぎないことを意識しなければなりません。自らの設定した課題の解決に資する情報を主体的に選び出して的確に分析するためには、課題に真剣に向き合い深く思考し、多くの人と考えを共有することが欠かせません。私たちは、様々な職業や社会経験を有する会員同士が、地域の課題について日々議論を交わし行動している組織としての強みを活かした青少年育成に取り組む必要があります。地域の子供たちに対し、他者とのコミュニケーションを通じて人間関係を築き、対話や協働を通じて課題に対処する経験を積む機会を創出することが求められます。これからの世の中がいかに変化が激しく予測の困難な時代になったとしても、子供たちには自らが思い描く幸せを実現して欲しいという親であれば誰もが子に抱く自然な愛情こそが青少年育成の原点であります。大人である私たちも子供たちと共に課題に取り組むことで、不確実性の時代にあっても希望を持って確かな歩みを進めていく大切さを学び、共に成長することができるのです。子供たちが氾濫する情報に惑わされるのではなく、自らの考えで進むべき道を切り拓き、社会の中で自立して他者との関わり合いを持ちながら生き抜く力を育み、地域の課題解決を担う未来の創り手となるよう共に成長し、笑顔溢れる明るい未来の花巻を創造します。

※Society5.0:仮想空間と現実空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会。
※GIGAスクール構想:Global and Innovation Gateway for Allの略称。1人1台端末と高速大容量の通信環境を一体的に整備し、ICTや先端技術を効果的に教育に活用する構想。

 

多くの出会いから組織を活性化する

地域に住み暮らす多くの青年が集うことで、置かれた立場や価値観が異なる者同士の議論を活性化し、より多くの建設的な意見が生み出されます。多くの人との出会いは個々の会員を成長させ、組織としても地域に貢献するための新たな価値を創造する源泉となるのです。また、より多くの会員が集い、心を一つにして運動を発信することができれば、地域に対して力強いインパクトを生み出すことができます。花巻青年会議所で活動することによって、多くの人とのネットワーク、自己成長の機会、社会や地域に関する様々な情報等が得られます。そして、地域に貢献する経験を積むことで、自分自身の意識をより良く変化させる機会が得られます。拡大運動は組織と地域との最大の接点であり、それを担うのは個々の会員です。全ての会員が自分事として拡大運動に取り組み、入会候補者と向き合って熱意を持って青年会議所で得られるものを伝え、仲間を一人でも多く増やしていかなければなりません。会員一人ひとりが活動を楽しみ充実感を持つことで、入会候補者に対して自然と魅力を伝えることができるようになります。新たな仲間との出会いに好奇心を持ち、様々な場面で地域の青年と進んで交流することで、入会候補者へのアプローチの機会が生まれます。入会候補者へのアプローチを続けることは市民の意識変革に向けた行動そのものであり必ず自己の成長にもつながります。また、市民に対して魅力ある事業を行うことで、青年会議所の運動や活動に対する共感を呼び起こし入会へと導きます。相手の立場に敬意を持って耳を傾け、自らの経験に基づいた言葉で青年会議所の理念や魅力を伝え、共感を持って青年会議所の運動に加わる仲間を増やし、志を同じくする多くの仲間と共に力強く運動を発信する組織へと進化します。

 

個々の会員が成長を遂げる組織となる

花巻青年会議所は、近年の会員拡大の成果により多くの入会者を迎え入れ、新たに加わった会員が意欲を持って活動しています。個々の会員の活動を組織としての運動に昇華させるためには、青年会議所の基本的な事項に関する知識を習得する機会を増やして行く必要があります。青年会議所では単年度制の下で個々の会員がそれぞれの役割において能力を発揮することが求められます。役割を果たすことで得られる経験は、自らの視野を広げ、青年経済人としての資質を高める絶好の機会となります。青年会議所の理念や運動、組織に関する理解を深めることは、このような成長の機会をさらに価値あるものに高めます。また、青年会議所での活動の基本単位は委員会であり、委員会が一つのチームとなって事業を構築していかなければなりません。このような委員会活動の中で、個々の会員は様々な役割を果たし、達成感を持って自らを成長させることができるのです。会員同士が互いを高め合いながら充実した委員会活動をしていくために、互いの価値観を認め合いながら心を一つにしていくチーム運営の方法を学んでいかなければなりません。青年会議所という学び舎で志を同じくする多くの仲間と共に切磋琢磨した個々の会員が、青年会議所での経験を仕事や家庭に活かし、地域や社会に貢献することのできる人財を増やし続けることで、地域に持続的なインパクトを与える組織へと進化します。

 

結びに

2011年3月11日、東日本大震災が発災した時、私は駆け出しの弁護士として仙台におりました。その年の4月から地元である花巻に戻り法律事務所を立ち上げる予定で奔走していた私は、開業の目途が立たないまま、宮城県の沿岸地域の避難所に行って連日のように被災された方々の法律相談を受ける日々を過ごしました。財産や家族までも失って極限の不安を抱えている方々の声に耳を傾け、少しでも不安を取り除くことができればと思いながら自分が伝えられることを精一杯お伝えすることに無我夢中で取り組みました。自分は社会に対してどんな貢献ができるのかを深く考えさせられた日々でした。ライフラインや交通手段が復旧し物流も戻り始めた2011年10月、私は弁護士として生まれ育った地域に貢献できる仕事がしたいとの思いを新たにし、地元である花巻で法律事務所を開業いたしました。

開業から間もなく先輩方から入会を勧めていただき、私は花巻青年会議所の門戸を叩きました。入会当時、右も左も分からなかった私の目には、創立55周年の記念事業や記念式典を成功に導くために一丸となって活動している先輩方の姿が映っていました。それぞれに役目を果たそうとする人々が大きな目標に対して一つになって向かっていく時、その全体も一人ひとりも光り輝いて見えるほどに美しいと感じました。

与えられた場所で自らに課した役目を懸命に果たそうとする姿は美しい。

青年会議所での活動においては、地域をより良くしようとする事業が最大の効果を生み出すために、時に多くの時間や労力を要したり、真剣に取り組むあまり仲間との擦れ違いを生じたり、九割九分が苦難ではないかと思う程に辛い時もあります。しかし、その最後の一分にはいままで経験したことのない光明が見えるのです。その輝きは何事も諦めずに行動し続けた者だけが放つ光であり、その光が周囲の人々や地域を明るく照らし出します。決して自分一人では成し遂げられないことも、信頼し合える仲間たちと一緒であれば、その過程にどんな困難が待ち構えていたとしても共に乗り越えて成し遂げられることを、私は青年会議所の仲間たちから学びました。先輩の背中を追い、仲間の成長を目の当たりにし、自らを省みて気づきを得ながら行動を起こすことで成長を遂げることは青年会議所の最大の魅力であり、自らを成長させることが地域に対する貢献になると確信しています。

また、自分一人で青年会議所での活動を続けることは到底できることではなく、私の意志を理解して支えてくれた家族がいたからこそ続けられていると心から感じます。私が青年会議所に入会して学んだ一番大切なことは、家族に対して常に感謝の気持ちを忘れずに、その気持ちをしっかりと向き合って伝えることです。一番身近な存在である家族の共感が得られなければ、職場や青年会議所の仲間たち、そして地域の方々の共感を得ることはできません。自分を理解して支えてくれる全ての方に対する感謝を胸に、理事長の職を全うするべくひたむきに進んでいきます。

創立65周年を迎える本年度、会員一人ひとりが互いに敬意を持って切磋琢磨することでJAYCEE※としての成長を遂げ、常に見守ってくださっている周囲の方々への感謝の気持ちを抱き、心を一つにして地域に貢献できる事業に取り組み、私たちの地域への想いに対して市民の共感を生み出すことで「明るい豊かな社会の実現」へ向けて運動を展開していきます。

※JAYCEE:青年会議所に所属する個人を称する。

 

公益社団法人 花巻青年会議所
第66代理事長 安部 修司

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