理事長所信2023

理事長所信2023


スローガン

2023年度スローガン


基本理念

チャレンジ
~多様性溢れる持続可能な「誇りあるまち花巻の創造」~


基本方針


一、多様な人財が活躍する時代に即した組織への進化

一、ウェルビーイングの推進による企業と社会のサステナビリティの実現

一、スポーツの価値を高めることによる地域活性化

一、まちの中期ビジョン策定による運動の方向性の確立

一、パートナーシップによるまちのレジリエンスの確立

一、学びの本質を追求することによる自律した青少年の育成

一、地域の魅力や価値を発信する岩手ブロック大会の開催

一、より良い関係を築く広報と地域のリーダーを生み出す機会の創出

■はじめに

 

あなたは、現状に満足していますか。
私は、まちも、人も、自分自身もより良くありたいと願っています。

人は得てして変化を好まず、現状を守ろうとしがちです。しかし、新しいことや困難なことに挑戦せず、現状に甘んじていては、後退するばかりであることを忘れてはいけません。確かに、この不確実性の高い世の中において、現状を維持することは大変なことでしょう。しかし、変わらざるを得ない状況になれば、人は変わることが出来ます。新型コロナウイルス感染症のパンデミックによる、人々の価値観や行動様式の変容は、まさにその最たる例です。

それでは、なぜ私たちは変化することを避ける傾向にあるのでしょうか。
私のこれまでの人生を振り返ると、それは、失敗することを恐れているときに起こります。人は周りからの評価が気になるあまり、失敗を恐れチャレンジすることをやめ、確実に出来ることや言われたことだけを実行するようになります。そうすることで、たとえ失敗しても、自分を顧みるのではなく、周りの人や置かれた環境のせいにすることが出来てしまうのです。

チャレンジすることは勇気のいることです。しかし、失敗を恐れてチャレンジすることを避けてしまっては、成功や成長は望めません。成功の対義語は失敗ではなく、何もしないことです。勇気を持って一歩踏み出すことが、より良いまち、より良い人生につながっていくのです。

我が国の社会情勢は、多くの問題を抱えており、私たちが住み暮らす地域においても重くのしかかっています。この国難とも呼ばれる、混沌とした現在の社会情勢において、いつの時代も率先して行動して来たJC のあり方が、問われていると私は考えます。私たちは、希望をもたらす変革の起点として、持続可能な地域を創ることに挑戦しなければなりません。

まちづくりは自分ごとであり、みんなごとです。このまちを良くするのは、このまちに住み暮らす私たちに他なりません。この地域を自分たちの手でより良くすることが出来る環境に身を置かせていただいていることに感謝し、チャレンジし続けることで、誰ひとり取り残さない持続可能なまち花巻が実現されるのです。

 

■多様な人財が活躍する時代に即した組織への進化

 

私は、時代に即した組織のあり方を見つめ直し、組織をアップデートすることで、主体的により良い運動を起こすことが出来ると考えています。

花巻青年会議所は、2022 年に創立65 周年を迎えることが出来ました。それは偏に、いつの時代も変化に対応し、社会課題を解決することで地域にインパクトを与え続けた、先輩諸兄姉の弛まぬ努力によって築かれて来たものに他なりません。私たちはその歴史のおかげで、今この場に立たせていただいているのです。

一方で、社会情勢の目まぐるしい変化や、人々の幸せに対する価値観の多様化など、組織を取り巻く環境は大きく変わりました。在籍する会員の属性も多様化したからこそ、「今まではこうだったから」で済ませるのではなく、最上位目的に立ち返り、今の時代に合った組織のあるべき姿を見つめ直すことで、より良い組織体制へと変革する必要があります。

組織は器であり、運動を起こし、社会課題を解決するのは所属している会員一人ひとりです。全ての会員が組織を創っている当事者だという意識を持つことが出来れば、より強固な組織になると私は考えます。そこで大切になるのが組織の理念です。多様な価値観を受け入れ、対話を重ねることで、一人ひとりに理念が浸透し、当事者意識が芽生えます。誰もが認められ、安心して活躍出来る組織では、個々の発想や創造力が引き出され、運動の
価値が最大化されるのです。

私たちは一人ひとりがそれぞれ異なった環境で生まれ、異なった経験や知識を積み重ねており、物の見方や捉え方を指すパラダイムは、人それぞれです。あらゆるライフステージの会員がやりがいを持って活動することが出来る、自走する組織に進化を遂げることで、社会をより良くする運動に邁進してまいります。

 

■ウェルビーイング推進による企業と社会のサステナビリティの実現

 

私は、持続可能な社会の実現に向けて、働く人々が充実感や幸福感を持って仕事にあたり、その家族や関わる人々が幸せを感じるような地域にしたいと考えています。

産業革命以降の資本主義経済の発展により、私たちの生活は豊かになった一方で、短期的な利益の最大化を追求したことによる環境破壊や格差の拡大など、負の側面が世界的にも問題視されるようになりました。こうした行き過ぎた資本主義に対するアンチテーゼである、ステークホルダー資本主義が提唱され、株主や経営者の利益だけではなく、顧客はもとより、社員・取引先・地域・環境など、あらゆるステークホルダーに対する貢献が求めら
れるようになって来ています。

我が国においても、新しい資本主義の実現が掲げられました。分配は新たな成長を生み出すための投資であり、その中心にいるのは人です。社員をはじめとする人への投資の答えの一つが、精神的・社会的・身体的に良好な状態であることを指す概念であり、日本語では「幸福」と翻訳される、ウェルビーイング経営の推進だと私は考えます。

一方で、ウェルビーイングは企業の経営者だけが取り組むべきことではありません。個人のウェルビーイングが充足し、地域全体がウェルビーイングに向かっていくことで、より良いまちにつながっていくことでしょう。

行き過ぎた資本主義からの脱却という世界的な潮流を受け、今「いい会社」の定義が変わり始めています。幸福の観点からウェルビーイングを推進することで、企業のサステナビリティと社会のサステナビリティを両立する企業を増やし、幸福で持続可能な地域の創造に貢献してまいります。

 

■スポーツの価値を高めることによる地域活性化

 

私はスポーツが持つ価値を、受け皿となる地域と一緒に育てていきたいと考えています。

スポーツは、人生をより充実したものにするとともに、人間の身体的・精神的な欲求にこたえる世界共通の文化のひとつです。文化としてのスポーツは、明るく豊かで活力に満ちた社会の形成や、個々人の心身の健全な発達に必要不可欠なものであり、特に青少年期にスポーツに親しむことは、様々な意義を有していると私は考えます。

そのスポーツを取り巻く地域課題として、中学校における部活動のあり方が、今、変わろうとしています。このままでは子供たちがスポーツに親しむ機会が大きく減少してしまう恐れがあり、地域における持続可能なスポーツ環境を新たに構築し、子供たちの多様な体験の機会を確保する必要があります。

一方で、スポーツの価値は、決してスポーツを行う人だけのものではありません。2019 年に開催されたラグビーワールドカップでは、ラグビーの魅力が日本中に広がりました。釜石市でも試合が行われましたが、観客席やテレビの前で応援した人、大会会場のボランティアなど、それぞれがラグビーというスポーツに魅了されたからこそ、あれほどの盛り上がりにつながったのだと考えます。選手はもちろん、選手や試合を支える人、応援する人もまた、スポーツの価値を高めているのです。

物質的な豊かさによる便利で快適な時代だからこそ、スポーツに求められる役割は大きくなっており、スポーツが持つ魅力を通じて、する・みる・ささえる、関わるステークホルダーの幸せを生み出すことで、スポーツによる地域活性化につなげてまいります。

 

■まちの中期ビジョン策定による運動の方向性の確立

 

私は、JC がこれまで培ってきた、ステークホルダーとのパートナーシップを活かした独自のまちのビジョンを創り上げ、市民と行政が共有する、「目指すべき姿」の実現に貢献することで、地域をより良くしたいと考えています。

JC の大きな特徴のひとつに、単年度制という仕組みが挙げられます。1 年に1 度、全ての会員の役職が変わり、新たに社会課題が抽出されることで、より多くの会員に様々な機会が提供される、素晴らしい仕組みです。

この仕組みの価値を最大化するには、私たちの理念や目指すべき方向性を明確にし、JC 運動に継続性を持たせるべきだと私は考えます。そのためには、多様なステークホルダーと共にまちのありたい姿を描き、市民や行政から共感の集まる中期ビジョンを打ち出す必要があります。

大切なことは、ビジョンは掲げることが目的でないということです。ビジョンから単年度の運動のあり方を見つめ直し、実行に移すことで、地域に持続的なインパクトがもたらされるのです。ビジョンのある運動は共感を生み、そこから新たなパートナーシップが構築されます。あるいは、2023 年度に策定される、「花巻市まちづくり総合計画長期ビジョン」との連携も可能になるでしょう。

私たちは現在、VUCA※と呼ばれる大きな変化の時代を生きています。先行きが不透明で将来の予測が困難な時代だからこそ、多くのステークホルダーと対話を重ね、地域を巻き込み協働することで、様々な課題を解決することが可能になるのです。これにより官民の連携が一層強化され、明るい豊かな社会に近づいていくと確信しております。

※VUCA:Volatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取った造語で、先行きが不透明で、将来の予測が困難な状態を意味する

 

■パートナーシップによるまちのレジリエンスの確立

 

私は、防災・減災意識の向上を通じて、平時からステークホルダーと対話を重ね、関係性を構築することで、まちのレジリエンス強化に貢献したいと考えています。

そもそも、レジリエンスという言葉は、物体が元に戻ろうとする力を意味しますが、様々な危機からの「回復力、復元力、強靭性」を意味するとともに、ダメージを受けても粘り強くしなって元に戻りながら、以前よりもより良く立ち直る状態を表しています。

日本は世界有数の地震多発地帯であり、昨年を振り返っても、3月には福島県沖地震が発災し、同じ東北地方で大きな被害がありました。地球温暖化が原因のひとつと考えられる台風や局地的な豪雨災害などの異常気象についても、年々頻度が高まっているのが現状です。

花巻市のまちづくり市民アンケート調査によると、行政の防災・減災対策について安全・安心だと思うと答えた方が約46%にも関わらず、有事に備えた水や食料などの備蓄を行っているかという問いに対し、55%以上が用意していないと回答をされています。このことからも、市民の防災・減災に対する意識を向上させる必要があります。

花巻青年会議所は2019年に平塚青年会議所と災害発生時の協力体制や防災・減災につながる連携を目的とした友好JC締結を行い、2021年には花巻市社会福祉協議会と災害ボランティア活動支援に関する連携協定を締結しました。この社会福祉協議会との協定は、花巻市だけではなく、全国で展開されており、JC が持つネットワークはより一層強化されています。

ステークホルダーと有事に備えた更なる関係強化を図るとともに、行政、市民とともに自助・共助・公助のあり方を見つめ直し、いのちと暮らしを守る運動を展開してまいります。

 

■学びの本質を追求することによる自律した青少年の育成

 

私は、教育の本質である、自分で考える力を子供たちに培ってほしいと考えています。

学ぶことは本来ワクワクすることですが、そこには主体性が必要です。あれもしなさい、これもしなさいと、与えることが先行して、家庭でもいつの間にか勉強時間を確保することが目的にすり替わっていたことはないでしょうか。

与え続ける教育は主体性を奪うだけでなく、自己肯定感や幸福感の低さ、当事者意識の欠如を生む可能性があります。実際に、日本財団による、「18 歳意識調査」では、自己肯定感や当事者意識の設問において、他国と比較して圧倒的に低い結果が出ており、従来の詰め込み式であった日本の教育のあり方に警鐘が鳴らされています。

そこで注目されているのが、科学、技術、工学、芸術、数学の5 つの領域を対象とした理数教育に創造性教育を加えた教育理念であるSTEAM教育※です。知ると創るのサイクルを生み出す、分野横断的な学びは、未来の新しい価値を創る当事者を育みます。

Society5.0 時代の到来によって、AI によるビッグデータの解析が進み、社会の様々な活動は自動化され、「機械的な仕事」が人の手を離れていく日はそう遠くないかもしれません。これにより、人はクリエイティブな課題解決力や創造力を一層求められるようになるでしょう。

GIGA スクール構想により、花巻市においても、いよいよ教育現場のデジタル環境が整備されました。子供たちの将来がどうあるべきか、そのためにICT をどのように活用するか、子供たちが主体となる教育のあるべき姿を教員、保護者、地域など関わるステークホルダーと共に追い求めることで、新たな学習基盤づくりに貢献してまいります。

※STEAM 教育:Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Art(芸術)、Mathematics(数学)の5つの単語の頭文字を組み合わせた造語で、様々な分野の教育を横断的に学び、それらを応用し、想像力や創造的な方法によって問題解決をはかることが出来る人材育成に力を入れる教育概念

 

■より良い関係を築く広報と地域のリーダーを生み出す機会の創出

 

JCの使命は、より良い変化をもたらす力を青年に与えるために発展と成長の機会を提供することであり、この組織は地域のリーダーを生み出し続ける装置だと、私は捉えています。

リーダーとは、目標に向かってメンバーを引っ張っていく人財を指しますが、時代に合わせてリーダーのあり方も変化しています。なぜならば、多様化した現代社会において、目指すべき目標は複雑化しており、より多面的に行動することが求められているからです。

明るい豊かな社会の実現を目指し、世界中で社会をより良くする運動を起こして来たJC でしか出会うことの出来ない、傑出したリーダーからの学びは、意識変革を起こす機会となります。また、JC には優れた人財開発プログラムがあり、リアルとデジタルの両面から、出会いと交流の機会を創出し、会員の成長へとつなげてまいります。

JC には、40 歳になると卒業を迎えるルールがあります。毎年多くの卒業生を送り出しながらも、近年の会員拡大の成果によって、新たに加わった仲間が情熱を持って活動しています。全国的に会員数が減り続けているなかで、今後も持続的な会員拡大を行うためには、効果的な広報が必要です。

では、効果的な広報とは、どのようなものでしょうか。
広報は概ねPR の日本語訳に該当しますが、PR とはパブリック・リレーションズの略称であり、20 世紀初頭からアメリカで発展した、組織とその組織を取り巻く人間(個人・集団・社会)との望ましい関係をつくり出すための考え方、および行動のあり方とされています。つまり、広報とはステークホルダーとより良い関係性を構築するための手段であり、パブリック・リレーションズの観点から様々な媒体を活用した広報を行うことで、市民から共感が生まれ、組織が活性化する会員拡大につながっていくと考えます。

運動の価値を高める効果的な人財開発と、ステークホルダーとより良い関係を築く広報により、開発と拡大を両輪で回し、集める組織から集まる組織へ進化することで、市民意識変革団体として地域に持続的なインパクトを生み出してまいります。

 

■おわりに

 

JC は様々な機会に溢れています。
私たちは、その機会を通じて、自身が住み暮らすまちを、人生を、より良くすることが出来ます。

一方で、私たちがJC 活動に取り組むことが出来るのは、精神的にも身体的にも健康な状態にあり、家庭や職場など、身近な人の理解や支えがあるからです。それは決して当たり前のことではなく、誰かの犠牲のうえに成り立っていいはずがありません。
だからこそ私たちは、JC に取り組むことが出来る環境に感謝を忘れず、家族や社員、友人、共に活動する仲間を幸せにするために、本気でまちづくりに取り組み、昨日より今日、今日より明日をより良くするのです。

すべては、一人ひとりの行動から始まります。
私たちは自分自身がどうありたいか、この組織を、そして地域の未来をどうしていきたいのか。
ビジョンを描き、未来を創るために、共にチャレンジしてまいりましょう。

時代に即した組織に進化し、多様な価値観を持った人財が輝くことが、持続可能なまち花巻の実現につながると信じ、1年間運動を展開してまいります。

 

公益社団法人 花巻青年会議所
第67代理事長 佐藤 貴哉

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